『打天九』、『天九』

『打天九』『天九(TienGow(北京語), TinGau(広東語), Tin Kau, T'ien-kiu, Sky Nine, Heaven Nine)』は、天九牌１セットを用いた４人用のトリックテイキングゲームです。天九牌のユニークな牌構成とゲームのルールとが優雅に調和しています。

ゲームのシステム

主な目標は最後のトリックを取ることです。

準備(Drow)

プレイヤーは４人です。天九牌１セットとダイスと点数記録用のチップを用意します。無作為に最初の親(荘家)を決めます。

ゲームの始まり(Deal)

全ての牌を裏向きにしてよく混ぜ、親の前に牌を４段８列１山に積みます。誰から配り始めるかを親が無作為に決め、親から見て山の右端から１列ずつを反時計向き２周で配ります。配牌は８枚ずつになります。

最初のリードは、親が行います。

リードとフォローとトリックテイク

リード(Lead)は、任意の牌１枚(Singleton)、同位牌２枚組(Doublet, OnePair)、同位牌３枚組(Triplet)、同位牌４枚組(Quartet)、同位牌２枚組２組(TwoPairs)のいずれかで行われます。但し、同位牌２枚組として、【至尊(六,三)】を認め、【紅権六,大鶏六】を認めません。

他のプレイヤーは自分の手番に、リードと同じスート構成でより強い牌または組をフォロー(Follow)します。フォローできない場合またはフォローしたくない場合は、リードと同じ枚数の任意の牌を捨てます(Discard)。この場合には、そのトリックを取ることはできません。

手番が１周した時点で、より強い牌または組（同じ場合は先に出されたもの）を出したプレイヤーが、リード枚数に等しい数のトリックを取ります。但し、【至尊】は、リードにおいては最強ですが、フォローにおいては最弱と扱います。ペア２組の場合は、場に出されている全てのペア（最大で８組）の中で最も強いペアを出していたプレイヤーが４トリックを取ります。

トリックを取ったプレイヤーが、次のリードを行います。

ゲームの終わり

すべてのトリック（全８トリック）が終了したらそのゲームは終了します。それぞれのプレイヤーは取ったトリックの数を４から引いた数のチップを最後のトリックを取ったプレイヤーに支払います（５トリック以上を取っていたならばその差を受け取ります）。

最後のトリックを取ったプレイヤーが、次のゲームでの親となります。

チップに関するルール

得失点（チップ）に関するルールをまとめました。倍率に関するルールは全て累積します。

ゲーム中いつでも

親(The banker's multiplier)
親が受け取る又は支払うチップの枚数は常に２倍となります。
連荘
親が受け取る又は支払うチップの枚数は、連荘（連続してゲームの親を務めること）数に比例します。つまり、２連荘ならば更に２倍に、３連荘ならば更に３倍となります。

トリックの終わりに

賀至尊(Royal bonus)
【至尊】によるリードでそのトリックを取った場合（必ず取れます）、他の３人からそのトリック数に等しい枚数のチップを（つまりチップ２枚ずつを）その場で受け取ります。２組４枚によるリードの場合には、このボーナスは適用されません。
四大賀(Quartet-combo bonus)
同位牌４枚組（カルテット）によるリードでそのトリックを取った場合、他の３人からそのトリック数に等しい枚数のチップを（つまりチップ４枚ずつを）その場で受け取ります。
Smallest bonus / Captured penalty
【幺鶏三】(１枚)によるリードでそのトリックを取った場合、他の３人からそのトリック数に等しい枚数のチップを（つまり１枚ずつを）その場で受け取ります。しかし、【大鶏六】によるフォローが出された場合、他の３人にトリック数の４倍を（つまりチップ４枚ずつを）その場で支払います。

ゲームの終わりに

全敗ペナルティ
１回のゲームで１トリックも取れなかった場合に、ペナルティとしてマイナス１トリックが付加されます。よって、最後のトリックを取ったプレイヤーに支払うチップが１トリック分だけ増えます。
パーフェクト(Complete Game Bonus)
１回のゲームで８トリック全てを取った場合、トリック差によるチップの枚数が２倍になります。

牌や組の強さ

『天九』において、牌またはその組の強さは下記の通りです。ランクが同じあるいは目の合計が同じ場合には、先に出した方が強いものとします。

シングルトン(Singleton)

文子牌１枚の強さはランク順です。

武子牌１枚の強さはランク順です。

ダブレット(Doublet combo, One Pair)

武子牌ペアの強さは下記の順序です。但し、リードにおける至尊は最強ですが、フォローにおける至尊は最弱とされます。

文子牌ペアの強さは、下記の順序です。

文武混合ペアの強さは、下記の順序です。

トリプレット(Triplet combo)

文２牌と武１牌からなるトリプレット(a triplet combo)の強さは下記の順です。

文１牌と武２牌からなるトリプレット(a different type of triplet combo)の強さは下記の順です。

カルテット(Qurtet combo)

カルテットの強さは下記の順です。

ツーペア(Two Pairs)

ツーペアの強さは下記の順です（出されている全てのペアで比べます）。

オプション・ローカル・ヴァリアント・カスタマイズ

公式ルールというものは存在しないようです。

『打天九』
メイフォロー。ペア２組によるリードは認めていない（カルテットは可）。
『天九』
マストフォロー。トリプレットとカルテットのルールは無い。

The Early Death

ゲームに勝利するためには、少なくとも２トリックを取っていなくてはいけないものとします。７トリックがプレイされ残り１トリックになったときに未だ１トリックも取っていないプレイヤーは、リードが行われる前に最後の手牌を捨て、即座にそのトリックを失います（もちろん全敗ペナルティも付きます）。

One Red Dot Group

もし配牌８枚の中に赤い目が１個だけだった場合、それを宣言することにより即座にゲームは終了します。トリック数の計算は８トリックを取ったものとして扱います（更にパーフェクトボーナスも付きます）。なお、白い目(黒牌の場合)だけの牌は13枚しかないので、同時に複数が宣言されることはあり得ません。このルールは非常に古いものです。

倍率ドン！更に倍！(special last trick bonus)

最後のトリックを、賀至尊、四大賀、または幺鶏三(Smallest)で取った場合、トリック差によるチップの枚数が２倍になります。

日本語で書かれたルール(2003年12月現在)

ニチユー、ボードウォークコミュニティ、及び名古屋ＥＪＦにおける『天九』ルールは、まったく同じもののようです。文章構造から推測するに、間違いなく同一のリソースによるものでしょう。恐らくは、ドミノコム(dominoes.com)版を翻訳したのがニチユー版であり、それを写したものがボードウォークコミュニティ版で、書き直したものが名古屋ＥＪＦ版であろうと思われる。

そのルールは以下の通り。

これら４つの間の違いは僅かである（明らかな誤植は無視）。

さらに、名古屋ＥＪＦのサイトには別のヴァージョンのシステムが『打天九』として公開されている。名古屋ＥＪＦ版『天九』との違いは以下の通りと思われる。

考察

天九牌のユニークな特徴は「サイコロ２つを合わせた図案」「赤い目と黒い目がある」「目数とランクという二つの強さ」「非対称なスート」「コンパクトな枚数」などである。『天九』のゲームシステムではこれらの特徴のうち「目数とランクという二つの強さ」と「非対象なスート」がうまく活かされている。逆にいえば、このゲームにおいて牌の図案はほとんど重要ではない。

インストラクトにおける問題点

『天九』は必ずしも複雑なゲームではないが、初心者がプレイするには大きな問題がある。それは、スート区別とランク順位は牌を見ただけではわからないということだ。

もし牌を自作するのであれば、これらの情報を牌に記述するのがいいだろう。また、見やすいハンドアウトを用意するのでもいい。

フォローの条件

トリックテイキングゲームおいて、メイフォロー(may follow)とは「フォローできる場合にフォローしなくてもよい（その代わりにパスしたりする）」ルールであり、マストフォロー(must follow)とは「フォローできる場合にフォローしなければならない」ルールである。そして、マストフォローは「リードと同じスート構成であること」と「更に最後に出されたものより強いこと」という２通りのルールがある。

それぞれの特徴は以下のとおり。

メイフォロー
フォローが有利。後の為に強い牌を残しておくことができる。「この天九ペアは後の為に取っておこう！」。
マストフォロー（強くなくてもよい）
リードが有利。（トリックを取れる可能性が無くても）フォローとして出さなければならないことがある。他のプレイヤーの残り手牌を推測しやすい。「おい、彼はもう武子を１枚も持っていないぞ！」。また、出せるのに出さないというイカサマ(リポークと言う)の可能性がある。
マストフォロー（強くなければならない）
その中間。さらに、『天九』におけるランク順に習熟していないとミスを招くことがある。「えーと、手牌の【和２枚組】はリードの【梅２枚組】よりも弱いから出さないでいいよね？」

ちゃんと注意していないと、他人のリポークに気が付かないものだ（しかも罰則規定もないし…）。そこで、メイフォローを採用するのが良いと考えた。

配牌における確率

天九牌32枚セットからランダムに８枚を引いたときに１パターンしか存在しない特定の２枚組が来る確率は、32枚から24枚を引いたときにその２枚が含まれていない確率に等しい。従って、30/32*29/31*28/30*(中略)*9/11*8/10*7/9 =1/32*1/31*8*7 =56/992 =0.0565 となる。

【至尊】となる２枚組は１パターンあるので、配牌に【至尊】が含まれる確率は、1-(1-56/992)^1 =5.65％である。配牌に少なくとも一つの【同位文子牌２枚組】（11パターン）が含まれる確率は、1-(1-56/992)^11 =47.23％である。配牌に少なくとも一つの【同位文子牌２枚組】（４パターン）が含まれる確率は、1-(1-56/992)^4 =20.74％である。配牌に少なくとも一つの【同位文武牌２枚組】（16パターン）が含まれる確率は、1-(1-56/992)^16 =60.53％である。

そして、配牌に少なくとも一つの【役有りペア】が含まれる確率は、1-(1-56/992)^(1+11+4+16) =84.42％である。

特定の３枚組が来る確率は、29/32*28/31*27/30*(中略)*8/11*7/10*6/9 =1/32*1/31*1/30*8*7*6 =504/29760 =0.0169 となる。従って、配牌に少なくとも１つの【トリプレット（同位牌３枚組）】（16パターン）が含まれる確率は、1-(1-504/29760)^16 =23.91％である。

特定の４枚組が来る確率は、28/32*27/31*26/30*25/29*(中略)*8/12*7/11*6/10*5/9 =1/32*1/3*1/30*1/29*8*7*6*5 =3024/863040 =0.0035 となる。従って、配牌に少なくとも１つの【カルテット（同位牌４枚組）】（４パターン）が含まれる確率は、1-(1-3024/863040)^4 =1.39％である。

ついでに、配牌に【幺鶏三】が含まれる確率は、1-(31/32*30/31*(中略)*9/10*8/9)^1 =1-(1-1/32*8)^1 =25.00％である。まあ、四人うちの誰かに行くのだから単純に25％と考えるほうが楽なのだが…。

確率計算の応用例その１

配牌直後。【天】１枚を持っているとしよう。【地】と【八】は持っていないとする。ここで【三武人七(人,七,七)】をリードしたら、どれだけの可能性でトリックを取れるだろうか？

まず、24枚の中から特定の３枚組が配牌に行く確率は、21/24*20/23*19/22*(中略)*8/11*7/10*6/9 =1/24*1/23*1/22*8*7*6 =0.0277 である。そして、リードに勝ち得る３枚組は【三武天九(天,九,九)】【地,八,八】【地,八,八】の合計３パターンであるので、これらが配牌に行っている確率は、1-(1-0.0277)^3 =0.0808 となる。

子は３人いるので、(1-0.0808)^3 =0.7766 の確率で、このリードでトリックを取ることができる。

リンクや参考

Cuccoカードで代用して『打天九』を遊ぶ。

Satoshi ARAI ( arai@luminet.jp )