『Victory in the Pacific(太平洋の覇者、太平洋上の勝利)』(Richard Hamblen/AvalonHill/1977)は、太平洋戦争における大日本帝國海軍と連合軍艦隊との空海戦をテーマにした戦略級ウォーゲームです。日本側の目的は「有利な条件で講和するためにより多くの支配海域を確保し続けること」であり、連合国側の目的はそれを阻止することです。ゲームは半年単位の8ターンで構成され、支配海域から得られる点数(Points of Control)を競います。空母や戦艦や重巡洋艦などが1隻単位でユニット(駒)となってますが、ゲームバランスの為にパラメータはずいぶん調整されてます。史実と同様に、序盤は日本軍が有利ですが、後半は連合軍の凄まじい物量に圧倒されます。
今回は、序盤に真珠湾軍港とサモア軍港を攻略するハイリスクハイリターンな作戦を試してみます。第2ターンの目標は、ハワイ諸島海域(Hawaiian Islands)および米国委任統治領海域(U.S.Mandate)を制圧することです。これらの海域の制圧が困難になった場合には、珊瑚海海域(Coral Sea)を予備の目標とし米豪分断を図ります。英軍はできるだけ相手にしないよう、ベンガル湾やインド洋には手を出しません。
ゲームバランスが調整されているとはいえ、これらの海域制圧には帝國海軍空母の集中運用とアメリカ太平洋艦隊の戦力分散を必要とします。そのために序盤は、日本列島海域とマリアナ海域とアリューシャン海域と北太平洋海域と中部太平洋海域は必要最小限の水上艦で防御し、インドネシア海域と南太平洋海域とマーシャル諸島海域はもっぱら陸上基地航空隊だけで防御します(連合国の哨戒艦隊の侵入に対しては必要に応じて適切に派遣します)。これらのうち中部太平洋海域や北太平洋海域やアリューシャン海域は点数(POC)が低いので囮にして構いません。
第2ターンからはハワイ諸島海域と米委任統治領海域と珊瑚海に哨戒艦隊(各3〜4隻)を派遣し、連合軍に「どこを守るか?」の3択を迫ります。この3ヶ所のうち2ヶ所に強力な襲撃艦隊を投入します。このようにして5ターン終了時までに十分な点数(目標POC=29)を獲得しておきます。 6ターン以降は「得失点を計算して決定した絶対国防圏」だけを死守し、他の海域は放棄することで戦力漸減を防ぎます。例えば日本列島海域とマリアナ諸島海域とインドネシア海域だけ維持できれば1ターンあたりマイナス4点で済みます。7ターン終了時に19点あれば負けませんし、もしも13点であっても日本列島海域を守り切れれば負けません。
真珠湾奇襲には空母8隻(鳳翔以外)を投入します。空襲力4の空母4隻(赤城,加賀,翔鶴,瑞鶴)は装甲4の戦艦にそれぞれ割り当てます。この奇襲では撃沈よりも着底を優先します。もし可能なら第3次攻撃(第1ターンの通常の追撃戦としての空襲)を行います。もし第3次攻撃を行えなくとも、第2ターンの真珠湾空襲を予想させることで連合軍の作戦を限定させることができましょう。余裕があれば、奇襲2ラウンド目に停泊中の巡洋艦2隻も空襲します(これは真珠湾奇襲の直後のハワイ諸島海域の戦闘を考慮しています)。ハワイ航空隊も撃滅したいのですが、その余裕はあまり期待できません。
インドネシア海域には基地航空隊4を配備します。今回の戦略方針においては、最優先目標は戦艦2隻(英国東洋艦隊)ではなく防御力4の基地航空隊(5th.AF)です。英戦艦は討ち漏らしても構いません。
移動可能な5隻の連合国巡洋艦への対策を考えます。日本列島海域およびマリアナ海域には4隻(巡洋艦3+戦艦1)ずつ配備し、南太平洋海域およびインドネシア海域には基地航空隊だけを配備します。これによって、連合国巡洋艦3隻の侵入は困難になるでしょう。おそらく2隻は(イ号による制圧解除に備えて)珊瑚海および米国統治海域にそれぞれ哨戒に向かい、残りの3隻はベンガル湾(POC=2:1)かインド洋(POC=2:0)に移動または退避するでしょう。なお、日本列島海域に配備する戦艦1は哨戒艦艇ではなく襲撃艦艇とし、もし連合国巡洋艦3隻が他の海域に哨戒移動したなら中部太平洋海域に襲撃移動します。
中部太平洋に登場する米国空母への対策は以下の通りです。増援で登場する米空母(1〜2隻と想定)を確実に撃沈する為に、中部太平洋海域に戦艦4と巡洋艦5と軽空母1と陸戦隊を哨戒させる(襲撃移動で戦艦1が追加されるかもしれません)。陸戦隊と軽空母は囮になります。なお、この海域に米空母3隻以上が同時に出現する確率は1割程度です。
同じく、ハワイ諸島海域に登場する米国空母への対策は以下の通りです。ハワイ諸島海域には米巡洋艦2隻と真珠湾の生き残りがいるだろう。米空母3隻以上が同時に出現する確率は3割程度である(ちなみに5隻同時確率は1/81である)。やや高めに見積もり、空母3隻(および護衛5隻)登場を想定する。具体的には空母3と損傷戦艦1と巡洋艦8隻よ基地航空隊1と想定します。帝國海軍は、真珠湾奇襲した空母8の護衛をかねて、巡洋艦8と戦艦4を配備します。もし、珊瑚海と米国統治領にイ号を配備しないならハワイ諸島海域に配備します。
真珠湾奇襲は最悪に近い出目でした。空襲2回で真珠湾の戦艦8隻のうち「沈没1隻、着底3隻、大破1隻、中破2隻、無傷1隻」という戦果です。さらにこの第1ターンにハワイ沖に空母3隻(れ,ほ,よ)が登場し、中部太平洋に空母1隻が登場しました。なんとか第3次攻撃で真珠湾の戦艦3隻を撃沈しましたが、空母3隻には豪州に逃げられてしまいました。インドネシア海域ではレパルスに無傷で逃げられてしまいました。
第2〜4ターンにおいては戦略方針にある3択(ハワイ,統治領,珊瑚海)を迫りつつ点数(POC)を稼ぎました。インドネシア海域には航空隊3を常駐させます。サモアは攻略成功しましたが、真珠湾はぎりぎりで攻略失敗しました。
なんとかやりくりしつつ第5ターンの終了時にはプラス29点に達しました。あとは絶対国防圏を維持すれば勝利できるはずです。ケアレスミス(マリアナに哨戒艦隊を置き忘れ)もありましたが艦隊をやりくりしつつ耐えました。第7ターン終了時にマリアナやインドネシアを失いましたが、なんとかプラス17点を維持できてます。最後の第8ターンで日本列島海域だけ守りきれれば大日本帝國の勝利です。そこで、最終ターンには日本列島海域に空母13隻と航空隊6を哨戒させました。本土を米軍の空襲に晒したくありません。しかし残念なことに、最後の航空戦では連合国の物量に敗れました。結果はマイナス2点でした。
約6時間半。おつかれさまでした。
個人的意見ですが、このゲームは「日本側がよほど変なことをしなければ第6ターン開始時にはほぼ決まった形(日本側POCは29近く)になり、結果的に最終8ターンまで勝敗がもつれる展開になる」というデザインになっていると思います。
遠隔対戦用に2セット目の『Victory in the Pacific』を落札したら、私が10年ぐらい前に出品したものが戻ってきた。