Shove Ha'Penny(シャブ・ハィペニー、ショブ・ヘイプニー)

Shove Ha'Penny

子供の頃に五円玉や十円玉を弾いて遊んでた憶えがあります。テーブルの上の得点エリアを狙う単純な遊び方(要するに『おはじき遊び』の一種)でしたが、お金を用いてたこともあり妙に愉しかったです。

Shove Ha'Penny(シャヴ・ハィペニー、ショブ・ハ・ペニー、シャブハペニー)』は、9本の得点エリア「ベッド(Bed)」が描かれた平たいボードの端から、自分の手番に5枚のコインを1枚ずつ手で弾き入れ得点していく二人用ゲームです。古典的なルールでは、それぞれのベッドで3点ずつ得点し、合計27点で勝利します。各ベッドで3点を超えた分は相手の得点になってしまうルールが面白いです。

『Shove Ha'Penny』の歴史

エドワード4世の時代(15世紀後半)に、グロート銀貨を用いたゲーム『Shoffle-grote(シャフルグロート)』が英国で流行りました。このゲームは、中世後期に英国の上流階級で遊ばれていた屋外ゲーム『Shovel Board(ショベルボード)』『Shove Board(シャブボード)』を屋内向けに小型化したものです。この屋内用『Shoffe-grote』は紳士たちの間で大流行しました。しかし、やがて彼らの興味はビリヤードなどに移り、18世紀初頭には市民と農民だけがこのゲームをプレイしていました。ビクトリア朝の初期(1840年頃)にはハーフペニー銅貨が用いられるようになり、このゲームは『Shove Ha'Penny』と呼ばれるようになりました。

現在でもイギリスのパブや宿場でこのゲームを見かけることができます。

Equipments

Shove Ha'Penny :contents

このゲームを遊ぶためには、何枚かのコインまたはディスク、専用のゲームボード(木製または石製)、得点記録用具などが必要です。ベッドの脇にコインを置くことで点数を示すこともあります。

コイン(coin,disc)

最初の英国グロート銀貨(4ペンスに相当)は、1278年(エドワード1世の時代)に重さ89グレイン(=5.767g)で鋳造されましたが、それほど一般的なものにはなりませんでした。1351年(エドワード3世)に重さ72グレイン(=4.66g)で再発行されました。そして、1464年(エドワード4世)に、重さ48グレイン(3.11g)になり、広く一般的なものになりました。

当初の『Shoffe-grote』では、この48グラインのグロート貨が用いられてましたが、やがて「おはじき玉」とも呼ばれるシリング貨が用いられるようになり、ビクトリア時代にはハーフペニー貨(直径1インチ)が用いられるようになりました。

市販されている『Monarch Shove Ha'Penny』には、20枚のハーフペニー硬貨のレプリカが付属しています。このレプリカは、重さ3.5gで、直径が24mmです。コインは、10円硬貨(4.5g/23.5mm)や25セント硬貨(5.67g/24.26mm)などで代用できます。

ボード(board,slate)

Shove Ha'Penny :Bottom Shove Ha'Penny :top

ボードの大きさは縦が20〜24インチで横が13〜16インチです。ボードの手前(BottomEdge)からベッド(BottomBed)までが4〜5インチです。それぞれベッドは縦が1.25〜1.5インチ、横が11〜13インチです(溝を含む)。溝幅はコインの厚さに相当します。ベッド(TopBed)から反射板までが4.5〜6インチです。ボードの厚さは0.5インチ、ボトム部の脚長は0.75インチです。

これらの数字はあくまで目安にすぎません。なお、1インチは、約2.54センチメートルです。

Shove Ha'Penny :ボード設計図 … 『ゲームの世界』より

ゲームボードは自作することも可能です。『ゲームの世界』(日本ブリタニカ/1978年)には、ボードの設計図が掲載されてます(同書から画像引用しました)。オーダー家具屋に注文すれば数千円で製作可能だと思います。滑りやすく表面加工して貰うのを忘れずに。脚は取り外し可能なものにしてもらうと便利です。また、持ち手があると便利です。

Rules

ルールは非常にシンプルです。市販品には8歳以上と記されていますが、もっと低年齢でも愉しむことが出来ます。基本的に2人でプレイします。ソロプレイも可能です。

古典ルール

ベッドに完全に入っているか否かの判定

コイントスなどでスタートプレイヤーを決めます。

プレーヤーは自分の手番に5枚のコインを、1枚ずつ、ボードの手前端(Bottom)から9本のベッドに向けて、指や手で打ち込みます。コインが最初の線に達しなかったならやり直しです。既にボード内にあるコインに当てる(Toouch/Tickle)のは構いません。

手番の終わりに、ベッドの内部に完全に入っているコインを得点します。境界線に乗っているコインは得点になりません。判定が微妙な場合は、境界線の溝にコインを転がして接触判定します。

ゲームの目的は、9本のベッド全てで各3点(合計27点)を先取することです。各ベッドで3点を超える得点は相手のベッドの得点となります(相手側も同様に3点を超える得点はカウントしません)。

オプションルール

さまざまなローカルルールやハウスルールが存在します。でも、基本的な部分は同じです。

ヴァリアント…「Close-Out」

ゲームの目的は、9本のベッドすべてで1点を得ることです。既に1点を得ているベッドにコインを入れると相手の得点になります(もちろん相手も1点が上限です)。

ヴァリアント…「Progressive」または「Newmarket」

このバリアントはオックスフォード周辺でしばしばプレイされます。

自分の手番で得点したならば、それらのコインだけを持って再び自分の手番になります(Follow-On)。得点できなかったコインは使いません。つまり、得点し続ける限りずっと自分のターンです。

ヴァリアント… ECCM98大会ルール

最初のゲームの冒頭に2枚まで練習することが出来ます。

手番は5回ずつです。最高得点者が勝利します。もし同点ならば、サドンデスで決着をつけます。

別の道具で遊ぶ

『Top Curling』 『Magic 13』

『Shove Ha'Penny』のルールは、様々な物品で遊ぶことが出来ます。『Darts(投げ矢)』や『Quoits(輪投げ)』は言うに及ばず、『Top Curling』や『Magic 13』(ビーダマ弾き)のようなものにまで応用できます。アクション要素の代わりに、例えば「自分の手番に、任意の個数のサイコロを1回振る(合計10以上は外れ)」などいかがでしょう?

Play

各ベッドで3点を超えると相手の得点になってしまうので、ベッドに3点目を入れるのはゲームの終盤になってからの方がいいです。

Etcetra

Shoveは「押し進める」の意味です。そして、Ha'Pennyは「Half-Penny」の省略形です。日本語では「コイン弾きゲーム」「銭はじき」「銭あて」などと呼ばれます。

参考資料など。残念ながら日本語の文書はほとんありません。

購入する

『Monarch Shove Ha'Penny』Box A 『Monarch Shove Ha'Penny』Box B

日本国内で入手するのは少し難しいと思います。まれに専門店に入荷されることがあるようです。神保町の書泉ブックマートで見かけたことがあります。

参考文献など

以下のサイトや文献を参考にしました。誤植や誤訳もあるので注意が必要です。『Monarch Shove Ha'Penny』が最も詳細だと思います。

検索

ARAI Satoshi ( arai@luminet.jp )