y Quartermaster General (主計将校)

主計将校 (Quartermaster General)

主計将校

『主計将校(Quartermaster General)』は第二次世界大戦をテーマにした3対3の陣取りゲームです。手番には手札からカード1枚をプレイします。拡張セット『総力戦』には空軍拡張と仮想戦史拡張が含まれます。

基本セット

『主計将校』では枢軸側と連合側とに分かれて戦います。手番には手札1枚をプレイして、陸海軍コマ(支配マーカー)を配置したり除去したりトラップカードを伏せたりコンボカードをセットしたりします。30点差がつくか20ラウンド後により多く得点したチームが勝ちます。

基本セットのルール

ゲームの準備。

手番にできることは以下の通りです

  1. 資源の再配分(4枚捨。任意)。
  2. 手札1枚を使うまたは捨てる。
  3. 補給不能駒を除去する
  4. 得点する(2点/補給地)
  5. 手札0枚以上を捨てる
  6. 手札を7枚まで補充する

終了条件は以下のいずれかです。

細かいルールなど

補給状態にあるとは、補給地から自国の陸海軍コマで繋がっており、更に海軍コマなら味方陸軍に隣接してること。ただし、軍隊を設立できるエリアは「本拠地」または「補給状態にある自軍の隣」です。

情勢カードや対応カードのトリガーの為に、敵軍がいないエリアに攻撃することができます(友軍のみがいるエリアにも可?)。同様に、配置するコマが手元になくても陸海軍を設立することができます。なお、自国のコマはいつでも盤上から回収して構わない。

基本ルールにおけるカード構成

国:陸海:陸海陸海イ経情対:合:色:
独:73:627266120:41:灰:
英:55:55456267:40:黄:
日:55:463402411:34:白:
ソ:71:81626065:34:赤:
伊:43:43426254:30:紫:
米:56:554410580:41:緑:

基本セットにおける序盤

おおざっぱに言えば、イタリアの支援を受けつつドイツが早々に手数が増える情勢カードを配してソ連に攻め込むとたいていモスクワを落とせます。だから英米はドイツを妨害し、その間にソ連は防衛体制を整えなければなりません(しかも英国はインドやオーストラリアで得点源を支配しなければサドンデスで敗北します)。一方で日本はアジアの得点源に進出し英米に防衛を強要します。日独伊ソは方針が明確ですが英米は欧亜配分に悩みます。

序盤のヨーロッパ

ドイツは早急に情勢「電撃戦(戦闘&設立)」「行動志向(設立&戦闘)」「急降下爆撃(戦闘&戦闘)」「合成燃料(設立&設立)」を互いに連鎖するように何枚か配します。余裕があれば「大西洋の壁」があると良いでしょう。準備が整ったらソ連へ侵攻します。厚い皮膚より速い足。序盤の方針は明確ですが、アグレッシブにソ連を攻めるプレイは初心者には難しいかもしれません。

イタリアの序盤はシンプルに英米からドイツを守ることです。ドイツの手番を稼ぐために西ヨーロッパはイタリアが担当してもいいでしょう。ドイツ軍に付随してソ連を攻めるなら対応「除去されたら置き換える」が有用です。得点系カードは急ぎません。中盤以降に本国が攻撃されやすいのでいつでも設立できるように。イタリアは初心者に向いてます。

ソ連は下手に陸軍を設立してもすぐに撃破されてしまうので、ロシアやウクライナなど必要最小限に設立した後は「焦土作戦」「正面攻撃」「砲兵軍団を組織」「疎開委員会」や対応カード「祖国防衛」「モスクワ」「スターリングラード」「レニングラード」「冬将軍」などで備えます。できるだけドイツに連鎖させないように。時間はソ連の味方です。英米によるドイツ妨害が遅いとモスクワが落ちて手も足も出なくなるので初心者には向きません。

序盤のアジア

日本はアジアの得点源を目指します。英米の動きに応じて対応カードを伏せていきます。アメリカが情勢カード「優れた造船所(設立&設立)」「航空母艦(戦闘&設立)」「上陸戦(戦闘&設立)」を早めに配したら日米開戦に注意すること。たいてい序盤の独ソ戦の戦闘手順を見学できるので日本は初心者に向いてます。ただ、対応カードを連鎖させるのはちょっと難しいかもしれません。

イギリスは海軍を展開して西ヨーロッパを攻撃します。積極的にいくならスカンジナビアや北アフリカで港を確保しドイツ本国やイタリア本国を攻撃します。「エニグマ」などでドイツの情勢カードを除去できれば少し楽になります。一方、もし可能なら情勢やイベントで序盤にインドやアジアで陸軍を展開し得点源としつつ、アメリカが西太平洋に来るまで日本の攻撃を引き受けます。バランス感覚が重要なので初心者には向きません。

アメリカは最も強力な国家ですが、戦線に辿り着くまで時間がかかります。手数を稼ぐ情勢カードは必須です。最初の手番はアメリカ西部で陸軍設立です。その後はヨーロッパを目指すのが良いでしょう。太平洋を重視するにしても、英国を守る為に北海までは支配しておいた方がいいでしょう。ゲームを長引かせることができれば経済攻撃によって連合側が勝利します。初心者向きです。

拡張セット『総力戦』

拡張セット『総力戦』には『Air Marshal』と『Alternate Historys』のルールがほぼ含まれています。ただし厳密に一致するものではありません。

空軍拡張によって、プレイステップと補給ステップの間に「空軍ステップ」が増えます。空軍力カード1枚で空軍を配置したり隣接エリアの空軍を除去したり、手札1枚を捨てて空軍を移動させたりできます(余談ですが、マニュアルの制空権は航空優勢と読み替えます)。戦闘においては自国の陸海軍コマを除去する代わりに自国の空軍コマを除去することも選べます。また、増強カードもこの拡張に含まれます。

仮想戦史拡張には史実で実現されなかった多くのイベントが含まれます。ざっと眺めた印象では特にアジアでのイベントが増えてます。日本はしばしば前半に放置されるので良い調整だと思います。ソ連はシベリア遷都が増えました。これでモスクワが陥落しても戦えます。また、追加されたフランス軍および中国軍のコマは英米の追加ユニットとして働きます。

拡張セット『総力戦』を適用する場合は「独68伊64日62ソ58英66米72枚(全て使用)。配12枚中7枚。再配分3枚。捨札1枚以上か失点1」となります。実験的デッキ構築ルールを用いるのであれば「独50英47日43ソ42伊38米50(デッキ構築)。配12枚中7枚。再配分4枚。捨札0枚以上」となります。

個人的に面白いと思うルールが「捨札1枚以上か失点1」です。30点差で勝つなら失点を避けるべきだし、20ラウンドで勝つならカードを温存しなければなりません。

手番の流れ

・資源の再配分(3枚捨サーチ)…任意
・手札1枚を使うまたは捨てる
・空軍(配備/空戦/再配備)…任意
・補給不能駒を除去
・得点する(2点/補給地)
・手札1枚以上を捨てるか失点1
・手札を7枚まで補充
終了条件
・ラウンド終了時に30点差以上
・20ラウンドが終了する

カードの構成

仮想戦史拡張のみ適用
国:陸海空:陸海陸海イ経情対増空:計:築:色:
独:73‐:6282138140‐‐:53:40:灰:
英:55‐:5645142109‐‐:55:39:黄:
仏:32‐:‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐:‐:‐:青:
日:55‐:473405719‐‐:49:33:白:
ソ:71‐:917290118‐‐:47:34:赤:
伊:43‐:445211486‐‐:54:30:紫:
米:56‐:5544159140‐‐:56:40:緑:
中:20‐:‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐:‐:‐:茶:
国:陸海空:陸海陸海イ経情対増空:計:築:色:
独:732:6282138140105:68:50:灰:
英:552:564514210974:66:47:黄:
仏:321:‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐:‐:‐:青:
日:552:47340571985:62:43:白:
ソ:711:91729011883:58:42:赤:
伊:431:44521148673:64:38:紫:
米:563:5544159140106:72:50:緑:
中:201:‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐:‐:‐:茶:

空軍拡張(『Air Marshal』に相当)

空軍コマと空軍カードと増強カードが増えます。

手番内に空戦ステップ(任意)が増えます。

戦闘中の空軍の処理

資源の再配分

資源の再配分

ところで『AirMarshal』では資源の再配分で「DeployAirforce(空軍力カードに相当)」もサーチできましたが、『総力戦』にその記述はありません。ホビージャパンに問い合わせたところ「空軍力カードはサーチできない」という旨の回答をいただきました(2020年10月30日)。

仮想戦史拡張(『Alternate Historys』に相当)

仮想戦史(Alternate Historys)

空軍拡張を適用せず仮想戦史拡張のみ適用した場合について考えました。『Alternate Historys』を準用するに「増強カードと空軍力カードを除去。さらに「中国での膠着状態(米)」「重慶爆撃(日)」「日本軍がウラジオストクを封鎖(日)」など空軍が関係するカードを除去。独53英55日47ソ47伊54米55枚(残り全部)。配10枚中7枚。再配分3枚。捨札1枚以上か失点1」とするのが相当だと思います。実験的デッキ構築ルールを用いるのであれば「増強と空軍力を除去。独40英39日33ソ34伊30米40(デッキ構築)。配10枚中7枚。再配分4枚。捨札0枚以上」となります。

箱に収納

圧縮

拡張込みでカードをスリーブに入れた状態でも、100円ショップのケースを用いてこのように収納することができます。蓋の幅を考慮し、上下交互に詰めるのがコツです。

拡張セットにおけるデック

それぞれの国のデックを改めて眺めてみます。

まずドイツですが、情勢「陸上巡洋艦P1000」が非常に強いです。全体的にカード枚数が増えたので「電撃戦」「行動志向」など手数を増やす情勢カードが最初に来る確率は下がりましたが、イベント「戦略的計画の立案」でサーチできます。強力な情勢カードが多いですが、しばしば英国によって無効化されることがあります。

イタリアはそれほど大きく変わってませんが、情勢「スペイン軍がジブラルタル海峡を占拠する」はイタリア本国の安全に役立ちますし、海軍でちまちま勝利点を稼ぐにも有用です。ただし、これも英国によって無効化されることがあります。

英国はフランス関連のカードが増えました。ヨーロッパだけでなくアジアであれアフリカであれ、どこを重視するかの戦略の幅が広がりました。序盤にドイツを妨害するカードは薄くなりましたが、ソ連も新たなカードでなんとか自衛できるでしょう。情勢「ホバーツ・ファニーズ」は手番中に枢軸側の情勢カードを無視できるので非常に強力です。ちなみに、ホバーツ・ファニーズは戦闘工兵車です。いったいどうやって?

ソ連はモスクワ陥落で手持ち無沙汰になりがちでしたが、仮想戦史ではアジア関連イベントが増えました。特に情勢「政府がクイビシェフに避難する」によるシベリア遷都はプレイ方針を言葉通りに左右します。「焦土作戦」と組み合わせればヨーロッパを完全に放棄できるでしょう。

日本はそれほど大きな変化はありません。しかし連合国との戦闘はより早い時期に発生します。対応カードを貯める時間は足りなくなるでしょう。

アメリカは中国関連のカードが増えました。英仏のように協調するのではなく米中2国を1人で担当する印象です。

連合側のサドンデス対策

地元のサークルで十数回ほどプレイされましたが、ほとんど枢軸側が30点差で勝利しています。そこで連合側の作戦を考察しました。

序盤に枢軸側は得点源5地域(ドイツ・イタリア・日本・中国・西ヨーロッパ)を確保し連合側は4地域(イギリス、モスクワ、アメリカ東、アメリカ西)を確保するでしょう。そしてドイツはウクライナに、やがて日本はオーストラリアとインドに攻めてきます。おおざっぱではありますが、枢軸側の得点源が6つ以上となれば10ラウンド過ぎにサドンデスで連合側が敗北します。したがって、連合側も序盤から得点源を確保しなければなりません。

…とはいえ、ソ連にできることはモスクワの防衛体制を固めつつウクライナを守ることぐらいです。ウクライナの焦土化は序盤から使うべきでしょう。最初からいきなりシベリア遷都すると、対日カードは使いやすくなりますが、モスクワ周辺で使えるカードが無駄になります。

アメリカも太平洋に進出したところで得点源はありません(そこにいるのはアメリカに手番を使わせようとする日本軍ユニットだけです!)。アメリカ西部を支配してからイギリスと一緒にドイツやイタリアを攻めるのが効率的です。アジアではせいぜい中国で時間稼ぎするぐらいでしょう。

よって、序盤に得点源を確保しなければならないのはイギリスです。手札にもよりますがイギリスは欧州を攻める前にインドかオーストラリアのいずれかを支配する必要があります。いずれ日本に奪われるまでに十分に稼げます。もし序盤にインドもオーストラリアも支配できないのであれば、ドイツやイタリアを攻めなければなりません。他に得点源はないのです!

英国の作戦は「印豪を占拠してから欧州へ」です。おおざっぱではありますが、連合側が何もしなければ日本は3ラウンドに中国を支配します。そして5ラウンドにインドを、あるいは6ラウンドにオーストラリアを支配します。どうせ守り切れないのですから、いずれかあるいは双方を支配したら放置で構いません。日本に攻められるまでに十分な得点を稼げます。

印豪支配に必要なカードは情勢「オーストラリアが労働力管理局を設立する(豪州で召集可)」や情勢「リンリスゴー卿がインドの参戦を宣言する(インドで召集可)」やイベント「連邦支持の増加(豪州で設立)」です。初期手札66枚中12枚を含めて最初の数ラウンドのうちにこれら3枚が来る可能性はほぼ5割です。いずれも手札に来ない場合はアメリカの到着を待たずして欧州に向かわねばなりません。ドイツもイタリアも海戦カードが2枚しかないので、北海や地中海から得点源(西ヨーロッパかイタリア本国)を攻撃するのが良いと思います。

米国の作戦は「アメリア西部を支配したら欧州に向かう」です。中国で粘ってもあまり意味がありません(日本は対応カードで中国を占領するかもしれないからです)。また、序盤に太平洋に向かったところでそこにいるのは得点源ではなくアメリカに手番を消費させようとする日本軍ユニットだけです。欧州に向かう前に「上陸作戦(陸戦&設立)」や「優れた造船所(設立&設立)」など手数を増やす情勢カードがあればなお良いでしょう。北海に英米の両艦隊がいて情勢「連合国遠征軍最高司令部」があれば補給切れの心配はほぼなくなります。

英国とソ連で欧州戦線を維持できるようになったらイベント「戦区の移動」などで欧州大西洋のユニットを太平洋に大転換して日本を攻めます。

日本はいつ印豪を支配するか

日本の序盤は「第3ラウンドに中国を支配する」です。基本的には「海軍設立→陸戦→陸軍設立」ですが、陸軍を設立するまでに中国軍を召集されてしまう可能性があります。

第3ラウンドに中国エリアの敵軍を除去し陸軍を設立するには対応カード「盧溝橋事件」「国共内戦」「中国での攻勢」のいずれかが必要で、山札62枚から初期12枚にいずれかが含まれる確率はおよそ48%です。初期手札にそれらの対応カードがなければ、第1ラウンドは資源再配分(優先順序は「海軍設立」「陸戦」「陸軍設立」「既に3枚があれば再配分しない」)し、「海軍設立」をプレイし、ディスカード1枚して、山札49枚から4枚ドローするのが良いでしょう(確率17.6%)。

おまけ

その他

ARAI Satoshi ( arai@luminet.jp )