OGRE (オーガ)

『OGRE』とは、超戦車オーガを多種多数の兵器を用いて迎撃するシミュレーションゲームである。


OGRE is registered trademark of Steve Jackson Games, Inc.

『OGRE』について

このゲームを最初に知ったのは、ボードゲーム雑誌の記事だったと思う。シューティングゲームなど超戦闘機1機で敵に大群を壊滅させるゲームが多い中で、雑魚の大群をもって超戦車1台と戦うというコンセプトが非常に気に入った。

実際に現物を見たのはしばらくしてからで、それはPC版だった。「なるほど、1台だけならば思考ルーチンもかなり深く先を読むことができる!」と感動したものである。

早速、秋葉原でPC版『OGRE』を入手した(当時の私のマシンはPC-9801F2だ)。プレイ相手に恵まれなかった当時は対CPU戦に燃えていた。恐らく乱数に下駄をかましてあるのだろうか33%への命中率が異様に低かった。


(C) Origin systems,Inc. / Systemsoft corp. 1986.

1990年代になってようやく人間を相手にプレイできるようになりました。

作戦の研究

PC版のマニュアルには、典型的な防衛作戦として「マルチホイツァー防御法」「GEV中心の防御法」及び「混成部隊による防御法」が紹介されている。

これらについて、もう少し具体的に考える。

「マルチホイツァー防御法」の考察

この野砲の布陣を果たして突破できるかな?」。

防衛側のコンセプト

この防衛作戦の基本コンセプトは、適切に配置した複数のホイツァー(野砲)によってアウトレンジからOGRE転輪部に集中攻撃し、OGREを停止させるというものだ。ホイツァー以外の兵器はホイツァーを守る為にOGREのミサイル2個を最初に破壊する。もし必要ならば、OGREの主砲1門も破壊する。

この防衛作戦はmk3に対して効果的であり、ミサイル6個を装備したmk5に対してはあまり効果的ではない。

OGRE側のコンセプト

この防衛作戦に対するOGREの対応アルゴリズムは、まずホイツァー群の射程範囲に入らないようにしながらホイツァー以外の兵器を誘い出して各個撃破していく。もし防衛側が絶対に誘いに乗ってこない場合は、防衛側の配置に隙があればそれをついて長距離兵器でホイツァーを破壊していき、配置に隙が無ければ脱出する(守備側辛勝)かできるだけ損害を少なくしながらホイツァーを破壊して司令部を目指す。

事例

Chester Hendrix氏による[The Four Howitzer Defense in Ogre]は対mk3防衛作戦において、司令部を位置1401(地図の北西)に配置し、4つのホイツァーをそれぞれ、位置1506・位置1007・位置0706・位置0904に配置することを提案している。

「GEV中心の防御法」の考察

OGREを撹乱しろ!、Hit&Awayだ!」。

防衛側のコンセプト

この防衛作戦の基本コンセプトは、防衛部隊のほとんどをGEVで編成することによって、OGREが司令部に向かって移動し攻撃を行なおうとしても、その目標になりえるユニットが少ないような状態(OGRE武器の稼働率が低下)を強いるわけだ。OGREが効果的に武器を使用するには無駄な移動力を費やさねばならない。

多数のGEVを最前線に配置して迎撃ラインを構築する。まずは、OGREの移動速度を1まで低下させることを目指す。単純計算で(対mk3の場合は)GEVによる45回の攻撃を要することになるだろう。その後は状況に応じて、OGRE転輪部を完全に破壊して停止させるか、司令部を守るためにOGRE武器を破壊するか、を選ばなければならない。GEVが1台でも健在ならば、停止したOGREを安全地帯から完全破壊することも可能なのだ。

なお、司令部は北側の中央に配置する。

OGRE側のコンセプト

防御線の薄いところから侵入します。2次移動で逃げたGEVが次のターンに攻撃できない位置に移動すべきです。また、まだ転輪部が健在なうちに、逃げたGEVを破壊する為に後戻りすることも選択肢に入れます。

GEV中心の防御作戦に対して、マップのサイドライン沿いを一直線に北上するという方法もある。OGREの移動の自由度が低下するが、それ以上に防御側GEVの移動や展開が制限されるので、結果的には有利になることが多い。すなわち、転輪部を破壊されないうちに司令部に辿りつく可能性が増えるということです。

事例

全ての機甲ユニットをGEVで編成する作戦がしばしば見られる。南側の平地において機動力を生かして、OGREの転輪部(及び主砲)を攻撃するものである。

Michael Nahas氏は[Basic Ogre Defense]において、GEV6台、重戦車3台、ミサイル戦車3台、歩兵20という編成を立案している。

「混成部隊による防御法」の考察

戦術は臨機応変・自由自在」。

防衛側のコンセプト

混成部隊による防衛作戦のコンセプトは、様々な射程の兵器を同時に運用することにより、多大な火力を同時にOGREに浴びせることにある。

OGRE側のコンセプト

防衛側が展開した布陣に正面から突入するのは賢いアルゴリズムではない。序盤は、優位な機動力を活かして防衛側の兵力を分断し、各個撃破していくべきである。

また、1ターンの攻撃で倒しきれないほどの防衛兵力がOGREのすぐ前方にいるならば、躊躇うことなく踏みつぶして前進すべきである(1ターンに2回まで)。なぜならば、その後の防衛側攻撃によって失われるであろうOGRE転輪部は、踏みつぶしによる喪失ほど多くはないからだ(防衛側攻撃は複数のターンにわたることを失念してはいけない)。

事例

PC版のマニュアルでは、ホイツァー2基、重戦車2台、ミサイル戦車2台、GEV4台、歩兵20というのが典型的な編成として紹介されている。

私がしばしば採る防衛作戦

GEV主体の防御方法の一種です」。

司令部を北東の位置1401に、機甲部隊(重戦車3台、ミサイル戦車2台、GEV1台)を前線やや東よりに、GEV部隊(GEV6台)を境界線沿いに、歩兵部隊(歩兵20)をGEV部隊のすぐ後ろに配置する。基本方針は、OGREの主砲及びミサイルを破壊し、副砲を有効に稼働させないようにしながら転輪部を破壊し続けるというものだ。GEVが1台でも残っていれば、停止したOGREの副砲や対人兵器はノーリスクで破壊できる。

序盤は、機甲部隊がOGREの前方6ヘックスの位置(OGREが移動してなお副砲が届かない距離)に迎撃ラインを展開する。そして、スクランブルしたGEV部隊がそれに合流する。歩兵部隊はOGREの前方9ヘックスの第2次防衛ラインに向かって前進する。

OGREの対応によって「急戦」と「持久戦」とに分岐する。守備側のGEV部隊が前線に到着する前にOGREが機甲部隊に突入してくる場合は「急戦」となる。一方、OGREが各個撃破をもくろんだ場合は「持久戦」となる。

いずれも一局である。

Tips

勝利の為に必要なら、躊躇せず実行することだ」。

ホイツァーと重戦車

Michael Nahas氏は[Basic Ogre Defense]において「ホイツァーほど使えないユニットは他に考えられない。ホイツァーの代わりに重戦車2台を配備する」と述べている。

マルチホイツァー防衛作戦を採るので無い限り、中途半端なホイツァー配備は防衛兵力が分散してしまうリスクが高い。

歩兵の前線配置

歩兵20を最前線に初期配置しGEV12台を後方に初期配置するという作戦がある。GEVは高い移動速度を持っているので、防衛戦力の重心を速やかに前線に近づけることができるのがメリットだ。その代わり、OGRE武器の稼働率低下は見込めなく、歩兵が邪魔でGEVを効果的に運用できない可能性もあり、序盤のOGREの移動速度に歩兵が付いて行けない、などのデメリットもある。

序盤における理想的な防衛ラインの構築

OGREに対して大火力による先制迎撃を仕掛けることが望ましい。その為には、防衛ラインを構築することが必要だ。

有効な迎撃を考えるならば、OGREのミサイル攻撃は受けるものと諦めて、距離7(移動3+主砲射程3+1)の位置に第一次防衛ラインを展開させるべきである。OGREが突入してきても、重戦車(移3+射2)、ミサイル戦車(移2+射4)、GEV(移4+射2)による迎撃が可能である。もし十分な防衛兵力が防衛ラインに投入できるならば(たとえば後方配置ユニットが到着したなど)、主砲の攻撃も覚悟の上で距離6(移3+副砲射程2+1)の位置に展開させてもいい。GEV部隊については、OGREの後方に回り込むことを意図し、防衛ラインの両端に展開させる。

また、歩兵部隊による第二次防衛ラインは、OGRE(移3)から距離8のあたりに展開しておけばいいだろう。OGREが第一次防衛ラインを突破しても、その直後に歩兵部隊による攻撃が可能なように準備しておくのだ。

実際には、このような理想型を実現することは難しい。なぜならば、OGREは防衛ラインが構築される前に前線兵力を削減すべく突入してくるからだ。だが逆に考えれば、これはOGREに突入を強要することに他ならない。

OGREのミサイル使用時期

OGREのミサイルは序盤に破壊されることが多い。ゆえに、ミサイルは破壊される前に使用すべきである。その優先すべき目標は、ホイツァー、GEV、ミサイル戦車、重戦車、歩兵の順である。

転輪部への攻撃開始を少しでも遅らせるために、ミサイルをおとりとして残しておくのはあまり賢いことではない。ミサイルの威力をもってすれば、ミサイルを狙う防衛側兵器をいとも簡単に破壊することができるからだ。トータルで考えると、やはりミサイルはさっさと使ってしまった方がよい。

Kamikaze Attack

GEV2次移動フェイスにおいて、あと一撃でOGREの移動速度を低下する(それによって味方の損害をより減らすことができる)ならば、愛国心に燃えたGEVがOGRE転輪部に体当たりすることもあるだろう。確実にOGRE停止させないと司令部が破壊されるような状況では、通常の移動フェイズに重戦車やミサイル戦車が体当たりすることがあるかも知れない。

システムに関して

機能停止ユニットの表示について

1ターンの手順は、以下の通りである。

  1. OGRE移動
  2. OGRE射撃
  3. 前ターンに機能停止した機甲ユニットの回復
  4. 守備側移動
  5. 守備側射撃
  6. 守備側GEVの2回目の移動

実際にゲームをプレイすると理解できることだが、回復フェイズにおいて前ターンに機能停止したのか現ターンで機能停止したのか区別しにくいという問題がある。PC版では自動処理されるので混乱することはないがボードゲームにおいては何らかのマーカーがあったほうがよいだろう。ダメージ表示として行動済マーカー2個を置くのが良いと思われる(行動済マーカー3個以上で破壊となる)。

もしかしたら「機甲ユニットの回復はOGRE移動の前。つまりダメージからの回復には1手番を要する」が正しいのかも知れません。

PC版におけるスタックについて

PC版においてOGREと防衛側ユニットとがスタックしている場合に、防衛側ユニットをポイントする操作が非常に難しい。

関連リンク

ARAI Satoshi ( arai@luminet.jp )