第14話『異世界の魔王(DM=いけた)』

事前情報

初期状況

ジアティス暦999年7月、スレスホールドの湾内(湖にだっけ?)に巨大な金属球体(直径600m)が突如出現し、第1次・第2次調査隊が派遣されるも未帰還。大司教からの依頼で第3次調査隊(ヒャクロ、アシュラ、ラサ)が向かうが、これも未帰還。未知の文字と音声で「危険。原子炉暴走中。臨界点突破まであとX日(14からカウントダウンされる)」と警告される。

同じ頃、スレスホールド近郊の村で村娘の神隠しが続き、見慣れぬモンスターの徘徊が続いている、と村人が訴えてくる。

ジョーンズ博士は(クリストファーの協力もあって)2本の古文書の解読に成功する。内容は各々、金属球体と魔物の出現の予言(予言者の名はハプスト)であった。

依頼

大司教に呼び出されたMM2メンバーは、「村娘の安否確認・生存者回収および魔物退治」を依頼される。宮廷魔法使いの言によると「問題の魔物は異世界の生物で、狭い空間に多数の魔物がいると、やがて『次元の穴』が発生し、そこに固定されてしまう。そうなると、異世界の魔物が自由に行き来できるようになる」そうである。

プレイ報告

展開

依頼を受けた一行(リーガ、シャオラ、マルガリータ、クリストファーは、兵士の一団とともに出発する。進行方向の変わる道やモンスターの襲撃に悩まされつつも、事件の鍵と思われる村に着いた一行は、村を覆う結界とその内側にいる見慣れぬモンスター(実は鬼太郎、目玉おやじ、猫娘、ぬりかべ、一反木綿、砂掛け婆、子泣き爺)だった。彼らの話によれば、鬼太郎とぬらりひょんの妖力の激突で空間に穴が開き、吸込まれた、という。

ぬらりひょんは(鬼太郎側から離反したネズミ男も)、こちらの世界のモンスターを操って魔王を召喚しようとしているらしい。ちなみに、結界は時間制なので、それ以前の解除は不可能という話であった。

村人から聞いた裏山の『次元の穴』を調査する一行の前に怪しげな男F(自称「討魔士」)が登場。「妖怪を全滅させるか、穴に追い返すかしないと、この穴は元に戻らない。穴が消えれば金属球体も消える。結界が解除される頃にまた来る」と言い残し、Fは去る。

神隠しにあった村娘のメモに基づいて監禁場所と推測される洞窟に急行した一行は、疑似水晶のオベリスクとぬらりひょんの体粘液を発見するが、村娘の姿はなく、オベリスクも破壊できなかった。しかし、その後の調査で残り4本のオベリスクを発見する。

クリストファーはネズミ男に取り入り、ぬらりひょんから「鬼太郎の闇討ち」を依頼される。

結界の村に「ハプスト(太古の予言者)の狂信者」がやってきて、「俺たちが妖怪を退治するから差し出せ」と強要するも無駄足に終わる。マルガリータは狂信者を追跡し、「予言書」を入手するが、新たな情報は「魔王と闘うべからず」だけだった。

急転

結界が解除された直後、鬼太郎グループとMM2は裏山に向かう。ぬらりひょん(とネズミ男)の一味が村娘を連れて『次元の穴』の前に現れる。戦闘は鬼太郎たちに任せ、MM2は村娘の回収を急ぐ。そこに狂信者たちとFが乱入し、大混戦になる。

村娘は全員回収成功、モンスターは全滅、鬼太郎一味(ネズミ男も含む)は全員無事、狂信者たちは全員行動不能、FとMM2も全員無傷。ぬらりひょんは己の不利を悟り、『次元の穴』に飛び込む。生け贄のないまま、魔王召喚の魔法陣が発動する。

驚愕

鬼太郎一味と、彼らを穴に追い落とそうとするFの間に村長の孫娘が割り込む。もみあいの末、(リーガの手をかすめて!)穴に転落。村長の口から、Fが息子であることが語られる。

そこに魔王が出現。「娘を返せ」と果敢に立ち向かうFだが、あっさりと昏倒させられる。戦闘に備えるMM2だったが、魔王の口から語られたのは意外な台詞だった。

魔王は、「人間と魔物の友好を望んでおり、村人たちが鬼太郎たちによくしてくれているので、礼を言う」と言い、「お前たちが落としたのは普通の娘か?ローブを着た魔法使いか?」と尋ねる。MM2が「(もちろん)普通の娘」と答えると、魔王は「正直な答えだ。気に入った。両方返そう」と言い、村娘と魔法使い(正体はヒロミ・エッシャー。発登場)を返す。

解決

魔王は「数日後に自分が『次元の穴』を塞ぐ。さすれば球体も消える。しかし、その前に球体の原子炉に制御棒を差し込み、暴走を阻止せねばならない」と言い、正気に返ったFの抜いた剣を見て「おお、それは制御棒ではないか」と言う。

娘が無事と知ったFは「討魔士」引退を表明し、MM2に剣を託す。

スレスホールドに飛んで戻ったMM2は金属球体内部に突入する。内部のトラップ(欲望の部屋)を突破したリーガが制御棒をコンソールのスリットに差し込んで、カウントダウンは停止した。内部で昏倒していた調査隊(ヒャクロ、アシュラ、ラサも)は無事救出される。

後日談

魔王が鬼太郎たちを連れ、『次元の穴』が塞いで帰った次の日、金属球体は突如消失した。

MM2は大司教から報酬と魔法物品をもらった。

問題の村ではF(本人から「フルーネリフトの略だ」と明かされた)が新たな村長となったと言う。この村がのちに「超獣保護団体アイアンピース」の総本部となる(あのフルーネリフトはFの息子である)ことをMM2は知らない(って、実際に彼が関わるのはメイプルヒル・キャンペーンの話だから……)。

設定の山々

金属球体

実は、原子炉内蔵の新型アトラクション「デンジャラス・ダンジョン」。未来の(?)別世界の物品。スイッチが入ると、剣型の制御棒(「Fの剣」参照)をどこかに転送し、14日以内に制御棒を戻さないと核爆発を起こすシロモノ。入口からは一本道だが、途中にトラップ部屋(「欲望部屋」参照)がある。直径600m。要するに、制御棒を探すミッションとトラップ部屋を突破するミッションの2段構えなわけである。

Fの剣

実は、金属球体に内蔵の原子炉の制御棒。セラミック製で輪形の構造をしている。常時冷却されており、超伝導状態にある。横からの衝撃には弱い。なお、セラミックにはカドミウムが混ぜられている。磁石と反発する(マイスナー効果)とか、電気系呪文を受けると攻撃命中まで電流が循環するとか、ちゃんと設定してあった。今回、『次元の穴』を中心点にして、金属球体の出現場所(スレスホールド)と対称位置に出現し、Fの手に入る。

欲望部屋

入口から順に、食欲、性欲、物欲、権力欲をかきたてる部屋。セービングスローに失敗すると、その場から移動できず、妄想にとりつかれてやがては失神する。妄想は部屋を(外力で)出された後も継続し、金属球体が停止させられると解ける。

リーガ
大量ドーピングの末、全部屋突破。
クリストファー
物欲まで突破(他のプレイヤーから疑問の声があがった)し、リーガの補欠に回る。
マルガリータ
性欲の部屋でダウン。キャラクター本人は(赤面して)黙して語らないが、かなり恥ずかしかったらしい。
シャオラ
食欲の部屋で早々にダウン。
ヒャクロ
第3次調査隊。物欲の部屋でダウンするも、第1次〜第3次では最奥部まで到達。
ラサ
第3次調査隊。食欲の部屋で早々にダウン。
アシュラ
第3次調査隊。食欲の部屋で早々にダウン。

古文書

前回(しゃおらのシナリオ)で発見された文書。太古の予言者ハプストの予言書。ジョーンズ博士が(クリストファーの協力もあって)解読に成功する。ハプストはガゼッタ公式設定にはありません、念のため。

1:今から××年後、この地の東方に謎の球体が現れ、人々が大騒ぎするが、2週間でそれは消える。その物体の存在意義は、いかに万能な我にもわからない。謎を解くには、異世界の魔王の力を借りるべし。日付・署名(ハプスト)

2:今から××年後、この地の北方に異世界の魔物が現れる。我を信奉する者はこれを討伐すべし。さすれば、英雄と讃えられよう。日付・署名(ハプスト)

予言書

ハプストの狂信者のリーダーの持っていた予言書の束。上記の古文書の内容もある。

3:今から××年後、この地の北方に異世界の魔王が現れる。しかし、決して闘ってはならない。日付・署名(ハプスト)

東洋妖怪

まんま鬼太郎である。

討魔士F

本名フルーネリフトのイニシャル。世界各地にちらばる(でも非常に少数)「討魔士」のひとり。彼の使う能力「法力」は超能力である。(もし今後も動かすならば、「サイオニクス」ルールを参照のこと)

迷いの森

進行方向が変わる森の中の道。鬼太郎を守るための結界と、ぬらりひょんの魔法陣の共鳴作用で空間がねじれている。

魔王曰く

「我は異世界の長。人は我を魔王と呼ぶ。落ちてきた娘はあずかっている」「勘違いするな。我は日頃異世界の住人が世話になっているので、礼を言いにきただけだ」「我々はこちらの世界と仲良くしたいと考えているが、人間はいたずらに我々を恐れ、倒そうとするため、我々も反撃せざるをえなくなり、悪循環が続いていた」「しかるに、この山のふもとにある村では、我が同胞を友人として扱ってくれ、感謝の念にたえない。これからも現在の良好な関係が続くことを期待している」「このことを伝えたくてやってきたのだ。もちろん娘は返そう。お前たちが落としたのは普通の娘か?ローブをまとった魔法使いか?」

(「普通の娘」との回答に答えて)「正直な返答だ。気に入った。両方あげよう」。(『次元の穴』について)「この穴を塞ぐにはあと数日かかるが、それまでに球体が臨界点に達してしまう。早く制御棒を戻さなくては」。(Fの剣を見て)「おお!それは制御棒ではないか!」

DM(いけた)のコメント

今回いろいろと問題点が上がった設定ですが、何せ当日早朝カーサで朝ご飯を食べながら急きょ変更したデータの多かったこと。

金属球体、次元の穴、東洋妖怪、討魔士、セラミックの剣、魔王の二択、ヒロミ・エッシャーの登場。これが最初のパーツでした。

最初の計画では、金属球体はただのフェイント(突如出現突如消滅の予定)でした。『次元の穴』との関係は後で追加しました。「欲望の部屋」は角川mini文庫「ロードス島戦記リプレイ」から(きわめて安易な)転用です。「原子炉の暴走」と「制御棒(次項参照)」から新型アトラクションを思いついたわけです。

セラミックの剣は、前回(DM:しゃおら)の後の昼食時の会話でヒントを得ました。「セラミック→超伝導→冷却」なので、制御棒にするという考えが浮かびました。

魔王の二択は「妖怪学園ザビエル」(魔夜峰央・秋田書店)よりの転用です。それに「げげげの鬼太郎劇場版」を加えて、「超獣保護団体アイアンピース」設立の秘話をエッセンスにして、「モンスターコンペ・オリエンタル」を参照して……ああなりました。

古文書の内容と金属球体の警告は、シナリオの最後か終了時に解読されるはずだったのに……。「コンプリヘンド・ランゲージ」おそるべし。

Satoshi ARAI ( arai@luminet.jp )